客席の設計資料・関連法規劇場計画にあたって考慮しておきたいポイント

劇場・ホール・映画館などの興行場施設の客席には、各地の条例や消防法が適用されます。
関連基準に適合させながら、施設の使用目的に合わせたレイアウトをします。
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ポイント1 背倒れ移動席

平床部分前列3列を移動席にして舞台下に収納するために背倒れ式にしています。
背を前方に倒してコンパクトにし、ワンタッチキャスターで移動可能です。

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移動方法
画像移動時
画像設置時

ポイント2 サイトライン(視線)

快適な環境で鑑賞するためには、視線の確保が重要です。ホールのセンター断面図をもとに、視線が確保されているかどうかを検証します。
部分的に見えにくい席がある場合は、その範囲に千鳥配置を用いることがあります。

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ポイント3 車イス用スペース

車イスで快適に鑑賞ができるよう配慮したスペースです。客席を簡単に撤去できる移動席を設置し、スペースを確保しています。出入り口に近く、他の席と同等の適切な視界が得られる場所が最適です。また、緊急避難時に速やかに脱出できることが必要とされます。
※車イス使用者のための客席・観覧席の設計について、詳細は本ページ下部をご参照ください。

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ポイント4 背倒れ席

操作卓などを設置するために、中央ブロックの各後方に設置。
操作卓などを使用しない時は、背を起こして客席として利用できます。
※特許

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背倒れ方法
画像背部を上方向に持ち上げる
画像前方に倒す

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操作卓使用時(音響設備設置前)

ポイント5 舞台下収納スペース

舞台スペース増設時やオーケストラピット使用時に、前列の背倒れ移動席(ポイント1)を収納する場所です。

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ポイント6 客席誘導灯(LED式)

ホール内の通路に設ける客席誘導灯は、通常は常用電源で点灯。常用電源遮断(停電)時には自動的に非常電源に切り替えて点灯させ、常に通路を照らします。
安全性だけでなく、舞台からの視線にも配慮して設置します。

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ポイント7 親子席

乳幼児、児童同伴で鑑賞するスペースで、一般席と仕切られているので、気兼ねなく楽しめます。親子一緒に座れ、眠くなったお子様をそのまま寝かせることもできる広さがあります。

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チャイルドクッション
お子様が視線を確保できるように、座面にセットできるクッションをご用意しました。大人の座高に邪魔されることなく、楽しむことができます。

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客席の関連法規

劇場・ホール及び集会場の連結イスは、建築安全条例及び火災予防条例により、その配置が規制されています。各都道府県によって多少の違いはありますが、東京都の条例を例にとって、主な解説をすると次のようになります。

  1. ①1人分の間口範囲は、420mm以上とする。
  2. ②イスの背の間隔(前後間隔)は、800mm以上とする。ただし、前席の最後部と後席最前部は、水平投影距離で350mm以上(③)とする。
  3. ③客席部通路は、8人掛けを超える場合、前席の最後部と後席最前部の水平投影距離350mmを1席あたり10mmの割合で広げること。ただし、20人掛けを超える場合は20人掛けとする。 (片側通路の場合は、2倍の掛け人数として客席部通路を算出する。)
  4. ④縦通路は、800mm以上(片側通路の場合は600mm以上)とし、避難経路の想定通過人数に応じて幅員を確保する。(人数×6mm)
  5. ⑤横通路は、1000mm以上とし、避難経路の想定通過人数に応じて幅員を確保する。(人数×6mm)
  6. ⑥通路が段床の場合、蹴上げは8cm以上18cm以下とする。踏面は26cm以上とする。
  7. ⑦縦通路の高低差が3mを超える場合、その高低差3m以内ごとに横通路を設ける。

座自動起立式の場合

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前席の背最後部から後席の肘最先端部までの寸法

座固定式または座手動起立式の場合

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前席の背最後部から後席の座最先端部までの寸法

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車イス使用者のための客席・観覧席の設計

2015(平成27 )年7月、国土交通省では、特に劇場、競技場等の客席・観覧席を有する施設において多様な利用者が円滑に利用できる環境整備を図ることを目的として、建築設計標準の内容を追補する「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(劇場、競技場等の客席・観覧席を有する施設に関する追補版)」を策定しました。
客席に関する部分について、主な解説をすると次のようになります。

設計の考え方

  • 駐車場や建築物の出入口から客席・観覧席までの円滑な移動、観劇・観覧
  • 複数の客席・観覧席の選択
  • 車イス使用者・客席観覧席からのサイトラインの確保

車イス使用者用の客席・観覧席

  • 車イス使用者の席数は、客席総数に応じることとする
  例 客席総数 1,500席:17席 / 客席総数 2,000席:22席
  ※算出計算で端数が出る場合は、端数を繰り上げる(2.4席→ 3席)

客席総数 車イス使用者の席数
~ 200席  客席総数の2%以上
201席 ~ 2,000席 客席総数の1% +2 以上
2,001席 ~ 客席総数の0.75% +7 以上
  • 客席総数200席を超える場合は、車イス利用者が選択できるよう、2カ所以上の異なる位置に分散して設置
  • 前後の客席・観覧席の位置、高低差を考慮した車イス使用者のサイトラインを確保
  • 同伴者(介助者、家族、友人等)用の客席・観覧席を隣接して確保 等
    車イス席1席に対して、同伴者席1席必要
    同伴者席は固定(通常席兼用・移動席)でも単品イス(スペースのみ)でもよい
※ 改正による部分は、2022(令和4)年10月1日以降に確認申請する施設が該当します。
※ 客席の改修による場合も、上記基準が適用されます。
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サイトライン(視線)

快適な環境で鑑賞するためには、視線の確保が重要です。ホールのセンター断面図をもとに、視線が確保されているかどうかを検証します。
部分的に見えにくい席がある場合は、その範囲に千鳥配置を用いることがあります。



参考

東京都火災予防条例・第四十八条・第二項

いす背の間隔(いす背がない場合にあっては、いす背に相当するいすの部分の間隔とする。次条において同じ。)は八十センチメートル以上とし、いす席の間隔(前席の最後部と後席の最前部との間の水平距離をいう。以下この条において同じ。)は三十五センチメートル以上とし、座席の幅は四十二センチメートル以上とすること。

東京都火災予防条例・第四十八条・第五項

イ いす席を設ける客席の部分には、横に並んだいす席の基準席数(八席にいす席の間隔が三十五センチメートルを超える一センチメートルごとに一席を加えた席数(二十席を超える場合にあつては、二十席とする。)をいう。以下この条において同じ。)以下ごとに、その両側に縦通路を保有すること。ただし、基準席数に二分の一を乗じて得た席数(一席未満の端数がある場合は、その端数を切り捨てる。)以下ごとに縦通路を保有するにあつては、片側のみとすることができる。

ロ イの縦通路の幅は〇.六センチメートルに当該通路のうち避難の際に通過すると想定される人数が最大となる地点での当該通過人数を乗じて得た幅員(以下この条において「算定幅員」という。)以上とすること。ただし、当該通路の幅は、八十センチメートル(片側のみがいす席に接する縦通路にあっては、六十センチメートル)未満としてはならない。

ハ いす席を設ける客席の部分には、縦に並んだいす席二十以下ごとに、及び最下階にある客席の部分の最前部に算定幅員以上の幅員を有する横通路を保有すること。ただし、当該通路幅は、一メートル未満としてはならない。

東京都建築安全条例・第四十七条・第2項二

段を設ける場合は、けあげを八センチメートル以上十八センチメートル以下とし、踏面を二十六センチメートル以上とすること。

東京都建築安全条例・第四十七条・第3項

興行場等の客席の段床を縦断する通路の高低差が三メートルを超える場合は、その高低差三メートル以内ごとに横通路を設けなければならない。



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